記憶の水底

祭の前に

これは、9周年のステージを見上げる前に呟く、個人的な7周年の話。


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ラブライブ! というコンテンツを人生で本当に初めて知ったのは、
実を言えばオタク系まとめサイトの1記事だったと記憶している。

2011年のことだったと思う。
とはいえ、当時高校生だった私は、今ほど隅から隅までアニメコンテンツの情報集めに躍起になっていたわけでも無く、
ラブライブ! という企画に対しても、「そんなものがあるのか」程度でスルーしていた。

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転機は、その2年後だった。

「騙されたと思って、見てくれ!」

同学年、理系クラスにいた友人2人が、ある種切迫すらしている雰囲気を纏って、そう勧めてきたのが『ラブライブ!』1期のアニメだった。
丁度7年前の、この時期だ。
1月上旬だ。

だが、アーハイハイ後でね、と、その時は一蹴したのを覚えている。

だって、2週間もしないうちに、センター試験を控えていたんですよ?

いや、正直文系クラスのこちらはこちらで「おい! "琴浦さん"ってやつがヤベえぞ!」「とりあえず前半見てくれ!!」とか言われていや15分見るくらいなら30分見るわ……つってうおおおおおおおおおなんだこのアニメ滅茶苦茶面白いじゃん!! とか馬鹿やってた気がするけど。2週間もしないでセンター試験だったのでは?

ともかく。

ラブライブか。
そういえばそんな企画あったな、アニメ化か、こいつらが勧めてくるってことはクオリティは確かなんだろうし、でもアイドルモノってことは曲も多いし、今期はもう琴浦さん見始めちゃったし、万が一にもハマってしまったらこの先の二次試験対策とかが疎かになりそうだよなぁ――なんて。
そんな危惧が少なからずあったため、この時は結局、一蹴とともに、

「わかった! 受験無事に終わったら見るわ!」

とだけ、答えたのだった。
この時は、完全に『行けたら行くわ』と同じテンションだった。

だが、有難くもセンター試験、二次試験と概ね恙なく済ませ。
すとん、と比較的大きな「暇」が生まれた、2月後半。
そういやラブライブめっちゃ勧められてたな……*1と、ふと思い出し――
満を持して、1期アニメを見始めたのである。

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ドハマりした。

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いや、こんなごっつりハマることあるぅ――? と、自分でも軽く引くレベルだった。
勧められていた通りアニメは全話見たし。
事前に「この子お前好きだよ」と予言されていた小泉花陽さんは滅茶苦茶好きになり。
当時発売されていたCDの中では一番既存曲を網羅できた「ラブライブ!μ's Best Album Best Live! collection」を買い。

結果……大学受験が終わり、高校を卒業して、大学合格が決まってから一人暮らしを始めるまでの、僅か一か月程度の間で。
ラブライブ!」というコンテンツは、恐ろしいほどのスピードで自分の人生の一部になっていったのだった。


2013年3月。
そこが、私の中のラブライブの、始まりだったのである。


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進学先は県外だった。

初めての独り暮らしだ。

もっといえば、自分が長男だった故、
我が家でも初めて、子供の独り立ちを経験することになったのである。

4月頭。

母とともに新たな部屋へ入居し、数日かけて転居手続きや入学式、大学などのオリエンテーションを済ませたのち、帰宅する母を新幹線駅の解説まで見送りに行った。

改札の向こう、母は、笑みながらも目尻に薄ら涙を浮かべていて。

その姿が見えなくなったのち――後追いで、無性に寂しくなった私は、在来線の電車の中でMP3プレイヤーを取り出し、イヤホンを耳にかけた。
その時聴いていたのも、また、ラブライブ!楽曲だった。


ススメ→トゥモロウ」だったのを、とてもよく、覚えている。


――だって可能性感じたんだ。そうだ、進め。
――後悔したくない、目の前に僕らの道がある。

2年生組3人が明るくも決意を込めて歌うその言葉に、あの日、目頭を熱くさせながら、私は大きな勇気をもらったのだ。

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大学生活のスタート。

孤独を感じる中、どれほど楽曲に力をもらったかは、数えていられないほどだった。
朝はアップテンポな全員曲で登校し、自習室や食堂では落ちつきのある曲を選んで聴きながら自習したり、本を読んだりした。カラオケが好きだったこともあり、自分でも歌えるよう、覚えるためにヘビーローテーションした曲もあった。

アニメこそ終わったものの、ラブライブ熱は、一向に冷めなくて。

それほどコンテンツ自体にハマっていた、というのもあるが、
もうひとつ、「熱」を高めていくモチベーションが、すぐ先に控えていたのである。

それが、6月16日、日曜日。
ラブライブ!μ's 3rd Anniversary LoveLive!」だった。


人生でも2,3回目でしかない、久々の「ライブ観賞」だが、
この時はまだ、現地参加ではなかった。

宇都宮。

高校時代の友人の一人が引越した先で――私にラブライブを勧めてくれた友人二人と、人生初のライブビューイング観賞をすることに、なったのである。

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早くもエモい展開じゃない?

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当日までは、なんか早くもオタク・イベントに詳しくなっていた連番者の手ほどきを受けながら、曲の予習とか、コール&レスポンスとか、サイリウム購入とか、色々やった。

当日、友人2人と劇場入りし、前から2ブロック目の最前列に陣取り。
開演後――初めこそ、場の雰囲気に気圧されていたが、それも一曲目「僕らは今のなかで」で全て吹き飛んだ。そこからの2時間+アニメ2期も発表されたアンコール1時間は、本当に楽しくて、近年最も盛り上がった。
正直、この時はまだ、一部の曲を覚えていなかったり、曖昧だったりした部分もあったが、それでも充分に楽しめた。演者の9人が掃けるときの、客全員での大合唱などは、初めての「ラブライブ!」であんなに素晴らしい体験をできるとは思わなかったほど、強烈な思い出になった。

間違いなく、ここが「ラブライブ!」に2段階目のドライブがかかった瞬間だったし。

今の自分の生活モチベーションのベースが固まった瞬間になった、
と言っても、過言ではないだろう。

ここから、どんどん関連ライブへと足を運んでいくようになっていくのだ。

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夏には、ユニットシングルを買い揃えたり、夏休み開始と同時にiPod touchを買って「スクフェス」を始めたり、滅茶苦茶いろんな人とカラオケに行ってμ's曲を歌ったりしたのち。

8月23日、帰省していた実家から夜行バスに乗り、東京へ行き、
μ'sが出演する「Animelo Summer Live 2013 -FLAG NINE-」へ、初参戦してきた。

超楽しかった。

これまで好きで、聴いていた「アニソン」と、当時盛り上がっていた「ラブライブ」がいっぺんに楽しめる、なんて夢のようなイベントなんだ! と、連番した友人たちとも大興奮だった。
以来、「アニサマ」への参戦は年中行事さながらというか、本当に毎年欠かさず友人たちと行くイベントになるのだが、これもまた、始まりはラブライブだった、というのが、後々どんどんと感慨深くなっていくのである。

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当時の日記を見返していたらアニサマの翌日にラ!関連聖地巡礼してた。

全力投球だなあ。


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そんな、独り暮らし半年間で、すっかり今の基礎は出来上がったも同然だった。
生活の一部として、ラブライブの楽曲たちが当たり前にあるようになったのだ。


秋には、作品にハマってから初のナンバリングシングル――6thシングルが発売されて、そのB面曲「LOVELESS WORLD」にかつてないほど惚れ込み、朝から晩まで、勉強中も食事中も聴くほどだったし。

夏以来、もはやルーティーンとなっていた「スクフェス」をやりこんで、特にスクフェスコラボシングルである「タカラモノズ」は、文字通り身体に染み付くほど聴き込んだし。

更に2014年2月には、さいたまスーパーアリーナで行われた「ラブライブ! μ's →NEXT LoveLive! 2014 〜ENDLESS PARADE〜」にも参加し、そのためにこれまでの曲をより覚えたり、円盤曲初め新たな曲を次々と覚え、また3rd・アニサマ以来のライブに没入することができたし――などなど。


なお、この4thライブは、初めて自分で円盤を買ってチケット応募をし、うち1日分の参加権を得られた、個人的にも特別な思い出のあるライブだ。また、リアルSnow halationだったり*2、ライブ中特に大好きなLOVELESS WORLD→Mermaid Festa Vol.1の繋ぎで連番相手と顔を合わせて吼えたりと、色々な意味で印象深いライブでもあった。


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大学生活二度目の春、4月がやって来ると、遂にアニメ2期が始まる。

自らはリアルで少し先の学生生活を満喫しながら、
一方では『残された時間を握り締めて』青春を謳歌する彼女たちを見守る。
合宿を行ったり、女の子らしい夢を叶えたり、街のイベントの成功を手伝ったり。
別れを意識したり、終わりを決断したり、それでもやっぱり、最後まで自分たちらしくあることを諦めずに、光を手にしたり。

そんな彼女たちを見守り、応援することは、とても楽しくて、それでも時には胸が苦しくなった。

だけど、だからこそ、エピソードをひとつ見るたび、
陳腐ながらも「自分もがんばろう」と元気づけられたことも、また事実で。

またそんな気持ちがあったから、最終話ののちも――比較的明るい「Happy maker!」で〆られたり、直後に映画化の発表があったり、というのも勿論だが――、喪失感、のようなものは、不思議と無かったような気がする。

アニメの終わりは、コンテンツとしての一区切りであることは間違いない。
それでも、この2期を通して自分は、更にもう一段階、このシリーズにのめりこんだような――そして、人生にも強い推進力を貰えたような、そんな気さえしたのだった。


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この年の地元の高校野球県大会をTwitter実況で見ながらオタクたちと一緒に「KiRa-KiRa Sensation!!」聴きながらめっちゃ応援してたんだけどこれは余りにも人生とラブライブを一体させ過ぎエピソードです。


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とはいえ、円盤曲でまた強い曲が出るたびに視聴動画をヘビロテしたり、スクフェスのイベントは毎回可能な限り走り続けたりと、相変わらず生活の一部には彼女たちの存在が、曲があったことは事実で。

ごくごく、個人的な話をすれば。
この頃は、交際相手と別れて、精神的にも参っていた時期だった*3
当時のブログやTwitter、通話履歴などを掘り返しても己の発露の仕方が(本心でこそあれ)乱暴だし、記憶を漁っても、幽霊みたいな生活をしていたことを覚えているくらいだ*4

この時はリアルタイムのアニメすら、ろくに見ていなかった。
そんな中で、ただやっぱり、ラブライブの曲だけは、追い続けていたし、リピートし続けていたのだ。

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神社の境内へ登りながら「るてしキスキしてる」を聴いていた記憶がある。
寒空の夜を寒いとあまり感じず、「永遠フレンズ」や「秋のあなたの空遠く」を聴いていた記憶がある。
カーテンを何日も開けていない(開けるような時間に起きていない)部屋で「そして最後のページには」を聴いて、少しだけ元気を出した日を微かに覚えている。

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近寄っちゃいけないタイプの奴か?

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年が明けて。
5thライブに挑む頃――「Trouble Busters」でノれるくらいの頃には、少しだけ、調子を取り戻しつつあっただろうか。

その「ラブライブ!μ's Go→Go! LoveLive! 2015~Dream Sensation!~」は、初日LV、2日目現地での参戦だった。
アニサマやほかのライブにも何回か行くようになって、だいぶ「現場慣れ」というものができていた頃だ。
ベースのテンションは落ち気味でも、やはりイベントに臨む時は気分が上がるし、実際、この時のライブも多分に漏れず盛り上がった。コール&レスポンスもすんなり出てくるようになっていたし、2日目ラストの「どんなときもずっと」大合唱は、かつての3rdライブをどこか彷彿とさせるものでもあった。

慣れもあり、新鮮もくれるような作品に、ラブライブはなっていたのだ。

一度人生で大きな「空白」こそ生まれたものの、そこをまた少しずつ満たしてくれた大きな一つには、間違いなく、この作品が含まれているだろう。

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2015年、初夏。

……このあたりになるとだいぶ本調子だったっぽいな……(「記憶」が結構戻ってきているので)。

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映画が封切られた。
ラブライブ!The School Idol Movie」だ。

前売り券にユニット別オリジナルシングルが付く、という試される特典を躊躇いなく3ユニット分買い、それぞれの曲を――特に思いっきり自分の感性に刺さった「乙姫心で恋宮殿」を聴き込んで気分を高めつつ、映画観賞に臨んだ。

1回目、花陽の私服の可愛さで無限にニヤニヤしてたら「SUNNY DAY SONG」をぶつけられて無限に泣いていた。最後の「僕たちはひとつの光」で文字通り立ち上がれなくなり、終わってからも劇場を後に出来なかった記憶がある。

前売りチケットの有る無しにかかわらず、当然、1回だけの観賞では足りなくて。

2回目は、大学の友人(!)と「応援上映」回に行った。皆そんなに回数を見ていないだろうに、どこでどんな展開や台詞が来るか、どんな曲でどうコールすれば良いか、などをよく把握していて、それに合わせて劇場皆で盛り上がれたのは、ライブとはまた違う楽しさがあった。

そして3回目は、普通の上映回に赴き、噛み締めるように、目に焼きつけるように彼女達の物語を見た。
ストーリーをわかっているからこそニヤリとさせられる場面、うるっとくるシーンがあり、案の定、全員でラブライブをするくだりから最後までは、ともすれば初回以上に、目から涙が溢れて止まらなかった。

どうか終わってくれるな、と、映画を見ている最中も見終わってからも、随分と思っていたような気がする。

今思えば――この時ともう一度だけが、「ラブライブ!」に関して「喪失感」に怯えた、数少ない瞬間であったようにも思う。

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お前……消えるのか……?
(この時消えそうだったのはむしろ僕)


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夏のアニサマでは「THE GATE」の副題に肖ってμ'sが「ユメノトビラ」を歌唱した。
元々がどう、というわけではないが、この楽曲がいっそう好きになった瞬間だ。

作品のメインストーリーは終わっても、既存のエピソードや、曲に、こうして新たな思い出が増えていく。そのことに、なんだかくすぐったいような嬉しさを感じて――この頃の喪失感は、少しだけ薄れていた。

否、コンテンツの「終わり」が見えていたことは事実だが、それを前向きに捉えられるようになった、とでも言うべきか。物語が、シリーズが終わったとしても、こちらまで喪失を負う必要はなく、それからもずっと好きでい続けるだけでしかないと、そんな解釈を得たのが、この頃だったのである。


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そんな年に「ラブライブ!サンシャイン!!」が発表されて目ん玉ひん剥いた。
お前終わらないんか――――い!!


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秋は個人的な話をしてもいい時期*5
大学で教員系のカリキュラムを取っていた私は、大学3年も折り返しを迎えるこの頃、実習関係が重なり学外での活動が主体となっていた。県内高校への指導演習だったり、介護活動だったり……。
その頃よく聴いていたのが、当時の最新曲である「HEART to HEART!」や「嵐のなかの恋だから」だ。いまでもこの2曲を聴くと、毎日朝早く起きて、弁当作って、寒さで身体を縮こませながら実習先に赴いていたあの頃を、鮮明に思い出す。
大学1年目の春などもそうだったが、本当に、ラブライブ楽曲に生かされ続けてここまで来たのだな、と、改めて思わされた。


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ファイナルラブライブ――!?
そんな報せが入ったのは、この年の暮れだった。
それまで「6th」と呼ばれていた翌年3月のライブが、μ'sにとって一つの区切りとなるという。
知り合い連中の反応は様々だったが、こと私に関していえば、この時はあまりショックを受けなかったことを覚えている。

それは、いろいろな情報を集めているうち、演者がしばしば「いつかは終わる」と言い続けていて、知らず心の準備が整っていたからかもしれないし。
先述の通り、映画でのショックを乗り越えて、ファイナルもすんなり受け入れられたからかもしれないし。
「終わる」とはいえ、近々ではユニットシングルが連続発売されたり(これがまあ3ユニットとも随一と言えるほど強い曲揃いだった、μ's全曲中でも新しい方なのに、かなり聴き込んだ)、紅白歌合戦にμ'sの出演が決まっていたりして、何ら終わるような実感を抱かせてくれないほど充実していたからかもしれない。


特に紅白は、実家で大いに盛り上がった。
家族見てる前でブレード振ってめっちゃコール打ったもん。
Chance for me!!!!! Chance for you!!!!!
何やってんだ。


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ともあれ、そんなこんなで、春――2016年3月だ。

何やら就活みたいなものが始まっていた記憶もあるが、この頃は全くといって良いほど真面目に取り組んでおらず。それが良いか悪いかはさておくにしても、だからこそ、この月末のファイナルライブに全力投球できたことは間違いない。

ラブライブ! μ's Final LoveLive!〜μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜」。

1日目は現地。
2日目はLVだった。

もちろん、友人たちも一緒で、
その全員が、3rdではじめて連番した彼らも含めた、高校時代からの同級生だった。

初の東京ドーム開催で、私もドーム場内に入ったのは、この1日目が人生初だ。

開演後、オリジナルムービーのあとの1曲目。
僕らのLIVE 君とのLIFE」。
既に涙ちょちょぎれていた自分がいた。

そこからも、歴代のナンバリングシングルや、アニメ1期、2期、映画の再現、また最新曲であるユニットメドレー、ライブ定番の盛り上がり曲――などなど、どこを取っても盛り上がりと、熱さしか無い時間だった。
加えて、曲を聴けば、やはり思い出が蘇る。ひとりのオタクとしてではあるが、一曲一曲と過ごしてきた時間はこれまでここに書いてきた様、本当に色々とあって、それらを何度も何度も想起しながら楽しめたのも、いままでの「集大成」たるこのライブだからこそだな、と思った。

先述の通り、1日目は現場でリアルタイム感を満喫し、2日目は新宿ピカデリーのライブビューイングへ。
LVはLVで、現場では見切れないような演者の細かい表情や絡みを見れるのが面白い。
特にファイナルは、アンコール後の「きっと青春が聞こえる」(1日目)「どんなときもずっと」(2日目)を除いてほぼ同じセトリだったこともあり、違う視点、違う心持ちで同じライブを見られた感じで良かった。

だから言うまでもなく、この2日目も大いにライブを楽しんで――。
最後。
1stアンコール3曲目の「MOMENT RING」、それから「僕たちはひとつの光」で彼女たち“18人”が光になったのを見届けた私は、とても心地よい幸福で満たされていたのだった。

もう彼女たちのライブを観られない。
新しい曲も少なくともしばらくは聴けない。
そのことに対する寂しさは当然、あったし、ライブ中は曲や、演者のコメントに対して何度も感極まっていた。

けれども、2日目すべてが終わって。
ビューイング会場の劇場から出たら、「満足感」の方がずっと強くて。

『ただ私は、それ以上に「楽しかった!」という思いが本当に強かった。アニメからハマっただけだし、ライブも3rdからの参戦だったが――この三年間の集大成として、今回のファイナルライブは本当に素敵な時間だった。だからこそ、別れの寂しさも 当然あるけれど、それ以上に、その時は興奮と満足感が強く胸に残っていたのだった。』

――と。
当時の日記にもそう綴っているほど、ときの私は「終わり」なんて意識できなかったほどひたすらに楽しくて、笑顔でしかいられなかったのである。


同時に。
友人たちが劇場を出てなお、目を赤らめ、涙とこれまでのμ'sに対する想いを溢れさせていたのも、誤解を恐れず言えば「嬉しかった」。
自分はいままで、こんなに綺麗な想いを持った友人たちと、同じ作品を応援して、情報交換をしたり、ライブで一緒に盛り上がれたりしていた。そんな彼らと、ファイナルまで一緒に来れた。
そのことが、堪らなく嬉しかったのだ。

劇場を出て、目を赤らめた連番の友人からは「なんでニヤニヤしとんねん」とツッコまれたりもしたが――こちらの想いの発露が不器用だった、ということでひとつ、今更ながらの種明かしだったり。

          *

オタクwww泣いとるwwwwみたいな気持ちなんか一切なかったからな!?

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そんなひとつの区切りを迎えつつも、春を迎えて、
少しだけ、自発的にμ'sの曲を聴くことも減って。

私は私で、就活に本腰を入れたり、母校での3週間の教育実習をこなしたりしていった中――2016年、夏。

シリーズ2作目である「ラブライブ!サンシャイン!!」、
そのアニメ1期が、始まったのである。


          *

これからやっとサンシャイン編ですか……?

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少し時系列は前後する。
前年、2015年。
サンシャインの第一報がなされ、初冬には、早くも1stシングルがリリースされていたのだ。

今回は地方が舞台となること、新ユニットも9人であること、うち1人は、音ノ木坂からの転校生であること――などなど、当時はそのくらいの情報しかなかっただろうか。

この頃はまだμ's全盛期でもあったため、正直私の中では、新興の彼女たちに対して「どんなもんか確かめてやろうじゃないか」という姿勢すらあった。
他方で、これまでラブライブを好きだった他の知り合い連中では、そもそもサンシャインは追わないことを公言したり、素振りを見せたりしている人も少なくなかった。

けれども、そんなそれぞれの気持ちが交々となる中、1stシングル「君のこころは輝いてるかい?」が発売され、私はMV映像付きCDを購入して。

「うわ、思った以上にラブライブじゃんか……!!」

俄かに生まれた高揚感とともに、そんな感想を強く持ったことを覚えている。

          *

ほんの少しの不安はありながらも、遠い遠い未来へ駆け出す希望を表す歌詞。
バラバラながらも精一杯踊って歌う「Aqours」の9人のメンバーたち。
そして、これまで何度も聴いて、何度も支えられてきた、かの曲たちを彷彿とさせるような、リズミカルで明るさに満ちた曲調。

ああ。
まだ「ラブライブ!」は続くんだ。
またこのコンテンツと一緒に、光を見ることができるんだ――!!

          *

そんなことを思って、Aqoursへの想いも次第に強めながら、半年とちょっと。

2016年夏。
教育実習で地元に帰った折には、学校と自宅の往復や、授業の準備をしながら「恋になりたいAQUARIUM」のシングルをお守りのように聴いて。

それも終わり、あとは民間での就活が決まるか決まらないか、という頃――。

期待と、少しの不安……そして少しだけ減った同士への寂しさとともに、私は、始まったアニメを見ていくことになったのである。

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アニメ全13話は、簡潔に言えば、面白かった。

はじめはμ'sの背中をどこまでも追いかけようとした千歌がいて。あの頃の「彼女たち」の映像や、ポスターや、ときには曲が縁となって、梨子や、花丸、ルビィとも絆が結ばれていく。
他方で、曜や善子などとは、はじめから「スクールアイドル」という枠には必ずしもとらわれない絆の結び方をしていったり――3年生組の、対立も協力もあった中で、彼女たちだけの過去や、葛藤が尊重されていった末のAqoursへの「復帰」など、少しずつ彼女たちだけの関係性が出来上がっていくのも、「ラブライブ!」でありながら「新編」を見ているのだな、という感想が持てた。

曲もそうだ。
主題歌である「青空Jumping Heart」は一度聴いただけで思い切り好きになったし*6、2年生曲2つや、のちに幾つもの伝説を作る「想いよひとつになれ」も、アニメでの初披露時点で気に入ったのは勿論、CDが出たら即買い、ヘビロテするくらいにはハマりこんでいた――確かこの夏は、帰省して自分で車を運転している間はずっと、「決めたよHand in Hand」シングルを流していたと覚えている。

ともあれ――そして、終盤。

「はばたきのとき」、彼女たちが遂にμ'sを追いかけるだけでなく、自分たちだけの道を進み始めることを"あの海岸"で決意した展開は、いま想起するだけでも涙が零れそうになるし、続く最終話で尺をいっぱいに使ったミュージカルと「MIRAI TICKET」は、まさにAqoursならではの物語を感じ、改めて「ラブライブ!を好きで『い続けて』良かった」と思った。


だが。

それでも、正直な話をすれば。
全13話、初めて見た時は良くも悪くも「面白かった」「良かった」という感想に落ち着いていて。
誤解を恐れずに言えば、「ラブライブ!」μ's編第一期の全13話を駆け抜けた後のような身を焦がすような昂ぶりは、この時はまだ感じていなかったのである*7


そんな感情が、また""ひとつ先""のステージに上がるのは、約4か月後。

内定も決まり、某人理を修復し、卒論を書き殴ったりし、とこの上なく頭のネジを外して人生を充実させた年末年始を乗り越え、もういくつ寝ると社会人という中――。

2017年、2月25日のことだった。


          *


ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First Love Live! ~Step! ZERO to ONE~」。
運命の日は、その初回公演日だった。

省みれば、登壇型イベントはこれまでも中央で何度か開かれていたようだったが、(どういう心境だったかは正直よく覚えていないものの)1stライブまでのイベントには、全く参加しておらず。
またこのイベントに関しても、現地では無く、地元の映画館で見たのだった。
曲予習も最低限で、各キャラのコーレスに関してはほとんどと言っていいほど覚えていない……という状態で、ライブビューイングへ飛び込んだのである。

連番相手は、やはり高校時代の友人2人だ。
μ'sの3rdで一緒だった彼らではなく、ファイナルで初めて現地でのライブデビューを果たし、自分と同様、サンシャインにもハマった心強い2人だった。
かつて、ライブ会場で横に並んだことのあった人や、開場前に会ったりしていた人たちは、少なくとも自分の知る限りではこの2人しかあのライブには来ていなかった。新シリーズを敢えて敬遠していた(であろう)友人、リアルタイムでサンシャインを見ていたかどうか定かではない友人、様々だったのだ。

仕方が無い、という思いが、この時はあった。

思いがあったし、私もこの期に及んで、アニメ前と同じように
ラブライブ!を謳ってはいるけど、実際どうなるんだろうな?」
という気持ちも、少なからず抱いてしまっていた。

          *

メチャメチャに「ラブライブ!」だった。

          *

サイコーに「ラブライブ!サンシャイン!!」だった。

          *

どれくらい「ラブライブ!」で「ラブライブ!サンシャイン!!」だったかというと、
終演後に連番した友人2人と駐車場に停まったままの車の中で「ラブライブ! だったな……」「うん、確かにラブライブ! だった……」「でも『ラブライブ!サンシャイン!!』でもあったんだよなぁ……!」みたいな、当たり前過ぎるけれどもこの日ばかりはあまりにも本質的という、そんな会話を延々としていたほどである。

当時自分がしていたツイートが面白い(≒興味深い)ので、ここで唐突に引用。
いずれもライブを見終わった直後だ。


>これなんだよな、これ。忘れてたよ。""""ラブライブ""""ってのはこういうやつ、なんだよな。

>この1stでラブライブ!サンシャイン!!は確かにラブライブ!だということを確信できたし、その一方でラブライブ!サンシャイン!!でもあるということを理解できたのがとても、とっても、嬉しい。

          *

――――""""ハマった””””、ねぇ…………。

          *

ある程度この時の感想を言語化するとしたら、


①ただの「新作」ではない、「ラブライブ!」シリーズであることを彷彿とさせる曲調と同様、ライブの雰囲気もそれを踏襲するものであったことにまず感動した

②それでいて出演者どうしの(素の)やりとりや、各々の役の演じ方で、ただ「μ'sの焼き増し」ではない「ラブライブ!サンシャイン!!」らしさも確かに感じられた

③「どれほどの練習を重ね、努力してきたのか」「どれほどパフォーマンスを忠実にやろうとしているのか」が察するに余りある完成度で、ただただ、圧倒された


と、そんな感じだろうか。

特にそれらを顕著に感じたのは、「想いよひとつになれ」と「MIRAI TICKET」で。
このときの(会場を含む)緊張感、パフォーマンスは、本当にアニメ一期と重なる――あるいは、アニメ一期""に続く""ような何かすら見えたような気がした。

つい最近まで私はよく、この1stライブをして「このライブでアニメ一期は""完成""する」のだと表現していた。
いまこうして、これまでの自分の感情をじっくり整理したとき、その表現にはもっと別の言い方があるのでは、と思わなくもないが……それでも。

あのライブ・出演者あってこその、「サンシャイン!!」アニメ一期で。
またアニメ一期あってこその、あのライブ・出演者、ひいてはのちに続くアニメ二期や、ナンバリングライブに違いない、と。
そのくらいは、今でもはっきり、感じている。

つまるところ。
ラブライブ!サンシャイン!! も、9人の少女の物語でありながら。
9人の少女と、そこに命を与えたもう9人の少女、「みんなで叶える物語」なのだと、そう思うのだった。

          *

翌日、行く予定の無かった2日目のLVを取ろうとして、それでも無理そうだからと諦めて。
そんな折、2日目の「想いよひとつになれ」のパフォーマンスで重大な出来事が起こり――

ああ、意地でも行けばよかった……!

そう激しく後悔するほどには、もうすっかり、「ラブライブ!サンシャイン!!」への、そして「ラブライブ!」への想いを、これまで以上に強く、堅くしていたのである。


          *


労働者になっちゃった。

1stライブからあっという間の1ヵ月とちょっと。
けもフレブームにしっかり乗っかかりながら人生の夏休みを満了し、2017年4月だ。

仕事をしてからもオタクであり続けることは変わり無いし、下手に隠して生きづらい社会を更に生きづらくするのも癪。なんなら、いずれオタク関係の人付き合いや仕事が出来れば万々歳だなー、みたいなことを思った結果、会社員生活1日目の自己紹介、私は、

「○○です! 私はオタクで、アニメを観ることが趣味です!」

          *

会社でラブライバーを2人見つけた。

          *

2人とはすぐに意気投合し、約1か月程度で私が異動となるものの、以降今日に至るまで仲の良い付き合いを続けさせてもらっている。
勿論、今までのオタクたちと仲良くしつつ、基本は一人で黙々とハマり続けるスタンスは、社会人になってからも変わることはなかった。相も変わらずCDを買い、書籍を買い――オタク全般含めていえば、なまじ労働の対価として「自分で稼いだ金」が手に入るようになってからは、生来のオタク気質、コレクション欲がいっそう活発化していったようにすら思う。


遠征に関しても、幸いにして比較的休みを取りやすい会社であったことから、外出する頻度が減るようなことにはならなかった。

残念なことに――本当に残念なことに、この年のアニサマは金曜の1日目だけどうしても行けず、Aqoursアニサマ初登場を現地で見届けられなかったのだけれど*8

ただ、その約一か月後。
Aqours二度目のライブである「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 2nd LoveLive! HAPPY PARTY TRAIN TOUR」埼玉公演には、満を持して、初日参加することができた。

          *

1stのLVで連番をした友人1人と一緒に会場であるメットライフドームへ乗り込み、初の生Aqoursで、大いに盛り上がった。

またしてもライブで一段階好きになる曲のひとつとなった「HAPPY PARTY TRAIN」から始まり、この夏アルバムが出た混成ユニットでの夏曲ラッシュが続き(真夏は誰のモノ? 強すぎて一生豆4! つってたしじもあいで小林愛香さんが近くまでトロッコで来てビビった)、DDW→スリワンで一瞬で喉が嗄れ、ユニット円盤3曲ラッシュで新たな曲を知れ、青ジャンやミラチケ、君ここなどの1stを彷彿とさせてくれる曲が続いたのちは、アンコールでとんでもない舞台装置とうちっちーが出てきて音頭を踊り――と、まさに特急列車のように名曲と興奮が駆け抜けていったライブだった。

極めつけは、アンコール後に突如として出てきた「ALL STARS」のムービーだ。
「PERFECT DREAM PROJECT」のロゴが流れ、例のドラマパート風の千歌アイコンが出てきて話し出したかと思いきや、

「――ね、穂乃果さん!」

そう声をかけ、次の瞬間には、穂乃果の声が会場中に響き渡っていたのだ。
そこからは、ラッシュだった。
穂乃果、梨子、絵里、果南、ことり……と、μ'sとAqoursの18人が交互に話を広げながら、新たなプロジェクト「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS」を発表していく。
これは何!? という思いと、それでも沸々と湧き上がる興奮、声にならないオタクの叫び声が、約5分間、会場を埋め尽くしたのである。

それぞれ、皆、様々思っただろう。
とにかく2グループの共演に期待が膨らむとか、μ'sにまた会えることが待ち遠しいとか。他方では、どんな絡みをするのか不安だとか、いたずらに共演させるのはどうかと思うとか――。

それでも、あの時のメットライフドームが想いに、熱気に包まれていたのは確かで。

私自身は、また新しい展開を見せてくれて、飽きさせる気などこれっぽちもない「ラブライブ!」がもっともっと、大好きになり。


『いつだって世界って同じじゃないね』

『まだ知らない明日がある ある あり過ぎるってこと』

『いま気がついたよ さあ旅だとう』


最後から2番目に披露された「太陽を追いかけろ!」の、そんな歌詞を噛みしめながら、Aqoursの、「ラブライブ!」のこれからを、改めて心から楽しみに思うのだった。


          *


2ndライブの2週間後から、いよいよサンシャイン!! アニメ2期が始まった。
最速には間に合わないから、最速~BS放送まではなるべくネタバレなど見ないよう気を付けなければ……などと思いつつ、いやいやAbemaTVなら最速で見れるんかい、と気付いたのが、当日の昼過ぎ。

沼津にいた時のことだった。

          *

2期OA初日、そして個人的突発的日帰り沼津旅行の日である土曜は、三連休の一日目だったのだ。
とはいえ、何か予定があるわけでもなく。
普段ならばド・インドアの私は「え!? 3日も人に会わなくて良いんですか!! ヤッター!!」と部屋でしこしこ執筆や読書やアニメ観賞にかまけるのだが。

この前日の夜ばかりは妙に、そわそわしていて。

結果、日付が変わって土曜日になってから、しかも2時過ぎくらいに、

「そうだ。沼津、行こう」

と、思い立ったのである。

そんなわけで軽く睡眠を取ったのち、土曜の午前中に新幹線、在来線を乗り継いで、静岡は沼津へ。
折角なので、と、これもまた当日の移動中に静岡在住の友人へ声をかけ、有難くも彼も来てくれることになり、沼津駅で合流。バスに揺られて内浦まで移動し、文字通り一夜漬けで仕込んだ情報をもとに数時間ほど「聖地巡礼」を楽しんだ。

観光案内所に行ったり、黒澤家の外観を見たり。
果南のジョギングコースや、水族館を通ったり。
碑石の前で「止まるんじゃねえぞ……」してもらったり。
千歌の家を発見したり――海を眺めたり。

いま住んでいるところではなかなか見られない、夕焼けに染まる綺麗な海と、水平線、そして誰かが書いたであろう浜辺の「Aqours」の文字を見た時は、文字通り、心が晴れやかになっていくような気持ちになった。

実家が海のすぐ近くだったこともあって、海にはとても馴染みがあり、とても好きな場所だった。
だからこそ、社会人になって、「ラブライブ!サンシャイン!!」にはまってから、こうして沼津の――内浦の海を少しでも見ることができた、というのは、それだけですごく大切な思い出になり得ることだった。

さらにそこへ、アニメ2期の直前で気持ちが高まっていることや、リアルタイムで感動を共有できた友人が一緒にいてくれたことが相まって。
いまでも、まるで昨日のことのようにはっきりと思い出せる記憶となっている。

――今回は日帰りだったけど、また絶対に来よう。
――それも願わくは、また次も誰かと。

そんなことを、強く思い続けている。

          *

19時過ぎに沼津を出て、再び新幹線に揺られ――ギリギリ2期スタート前に帰宅。
お土産の「のっぽパン」を食べながら、アニメ2期1話を見た。

新しいOP、2期にとても相応しい、そこはかとなく彼女たちの「成長」すら感じられるような曲に期待を高めつつ、またつい数時間前まで自分が""居た""場所に彼女たちも""居る""ことに不思議なくすぐったさも覚えつつ――雲の合間から太陽が出てきて、再び彼女たちの物語が始まるのを見たのだった。

          *

何気に社会人になってから初めてのリアルタイム「ラブライブ!」は、まさに自分の中で日々の楽しみであり、癒しになった。
この頃は丁度、1年目には明らか力不足であろう休日出勤を主体とした仕事を任されることが多く、またそれも「朝5時に起きて7時に集合」みたいな調子だったため、時間ピッタリに見れない話数もあったけれど。

とにかく「次の休みには新しい話だ」「この仕事が終わって帰ればやっと見れる」と、生きる原動力になっていたことは間違いない。

とりわけ序盤は5話「犬を拾う。」の温かさで涙腺がやられ実家で飼っていた御犬様が恋しくなったり、続く6話「MIRACLE WAVE」で千歌の努力――それもバク転をする、という、どこか共感すらできる努力!*9――に胸打たれたりと、自分の内情とリンクするところが多く、それがより心を動かしてきた。

それと同時、彼女たちの方では廃校が決まってしまうが、それでも悩みぬいた末「自分たちがいた場所を、証を遺す」ために""ラブライブ!""へ立ち向かうことにする――という、皆の雄姿にも落涙させられた。

「だから僕らは頑張って挑戦だよね」

キャンプファイヤーを囲みながら静かに歌い上げた特殊EDを聴いたあとは、暫く色々な思考が頭を駆け巡ってまとまらなかったし。その先に、

「次の輝きへと海を渡ろう」

勝戦、その大舞台で彼女たちにしか成せない「光の海」を作り出したあとは、しばらくポカン、とし、しかしそれからじわり、じわりと、ここに至るまでの様々な感情が押し寄せ、涙が溢れて止まらなくなった。

          *

キャラクターのことを想えば。

μ'sという、眩しすぎる光に魅せられながらも、最終的にはそんな光をただ追って空に羽ばたくだけの存在ではなく、「爪痕」をしっかりと――アイキャッチで何度も見た、砂浜に描かれた「Aqours」のように――残し、そこに至ったまでの奇跡/軌跡こそがかけがえのない「輝き」だと気付いた彼女たちへ、惜しみない拍手を送りたかったし。

他方、キャストのことを想えば。

μ'sという、偉大「過ぎる」存在が先にあって、恐らくは純な夢や希望だけでやってこれなくなりそうな時も、幾度となくあったと思う。大きな「憧れ」がなぜ終わらなくてはならなかったのか、なぜその跡を自分たちが継いだのか、他の誰かにはどう思われているのか――それを誰よりも考えていたのは、ほかならぬ9人だった筈だ。
それでも、あがいてあがいてあがきまくって、先代の焼き増しでもなければ、継承すべきものからは決して逸脱せず、そのうえでオンリーワンの結末に至った彼女たちへは、もはや「好き」だけでは収まらない感情が、更に、更に強まった。

          *

いやマジでね。本当に。

          *

本当にそんなことを想っていたから、年末、Aqoursの輝きが「WONDERFUL STORIES」で幕を下ろした時。
私は、ひとつのとても短い、物語を書いた。

ひとりの大好きな先輩に、これまでの自分や、あるいは他の人の気持ちを少しだけ、託させてもらって。

輝きを見せてくれた「彼女たち」を讃えながら、
光を教えてくれた「始まり」も絶対に忘れない。
そんな想いを込めて、物語を書いて――
それまでの感謝と、それからの期待を確かなものにしたのだった。


          *


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          *


2期が終わってからの約半年間は、ことこのシリーズへの向き合い方でいえば、CDを買ったりBDを買ったりすることに注力した時期だった。
年が明けてから一発目である「WATER BLUE NEW WORLD/WONDERFUL STORIES」のCDに始まり、実はこのサンシャイン!!アニメ2期で、初めてアニメ円盤を揃えたりもしたのだ。
それだけこの13話に心打たれるものがあったし、学生時代とは違い、それを決意するだけ自分で責任を持てる稼ぎがあったから、というのもある。
追いかけ続けるうちに自分でしんどい気持ちを抱えるようにはなりたくなかったから、自分の性質としても、このタイミングで円盤を揃えるようになったのは、丁度良かっただろう。
2期円盤曲はいっそう自分好みのものが多く、それも幸いした。

そんな期間を過ごしつつ、想いを再び爆発させたのが、2018年初夏。

ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 3rd LoveLive! Tour ~WONDERFUL STORIES~」だ。

          *

2ndに引き続き、こちらもライブツアーだったが、私が現地へ赴いたのは埼玉公演の2日目だった。
天気はやや悪く、それでも、会場に近づいていくたびに人が増え、電車内で、道すがらで、少しずつ熱気が上がっていく。
普段は「オタクめっちゃ増えてきた」「オタクについていけば会場着く」などと茶化したりもする(それも正直本音だ)が、あの「大きなイベントに自分も向かっている」感が、たまらなく好きなのも事実で。

特にこの時は、高校の友人が一人もいないラブライブ! の現場だった*10から、どこかに心強さを求めようとしていた節があったのだ。

LVでひとりになったことこそあれ、現地で「よく一緒にいる奴」がいないのは、本当に初めてだった。
とはいえ、代わりに隣へ来て連番相手となってくれたのは、中学時代の同級生で。
共通の仲の良い旧友*11を介して数年ぶりに再会と相成り、連番の席を設けてもらえたのである。

そんな不思議な状況もあってか、3rdライブはライブとして楽しみながらも、個人的に「誰とライブを見てきた/見ているか」ということをすごく感じながら臨んだライブとなって。

一発目、2期を終えて出てきた彼女たちの「未来の僕らは知ってるよ」で「I live! I live ""Love Live""!! days!!」を謳われた瞬間、これまでの思い出が一気に蘇り――一緒にラブライブ!を楽しんだ友人たちを思い出してからは、以後ずっと、比喩抜きで甘泣きしながらのライブを経験したのである。

「WATER BLUE NEW WORLD」では――年末に自ら筆を執った二次創作の影響もあるだろうが――かの「先輩」推しで、この時点ではまだ「サンシャイン!!」を見られていなかった友人のことを思い出したり。

青空Jumping Heart」で、「ラブライブ!」であり「ラブライブ!サンシャイン!!」であることを確信したAqours 1stや、初めてラブライブ!を見て圧倒されたμ's 3rdなど、みんなと盛り上がった記憶を思い出したり。

勇気はどこに?君の胸に!」で、「消えない、夢が」ここにあることを改めて知り、ここに至らせてくれた――自分にこの作品を薦めてくれた人たちにただただ感謝の念が絶えなかったり……など。

          *


本心を書くと急に対人クソ重本性が出るの怖いな

逃げないでね


          *

他方ではこのライブを経て、新たに生まれた思い出も多かった。

「MIRACLE WAVE」ではイントロ前から既に連番相手と泣いてたし、バク転後のコールでは過去数年で一番声を出していたし。
「Awaken the Power」では一瞬記憶が飛び、「Are you ready!? Let's go!!」と同時の爆発音で気が付いたら泣きながら吼えていたし。
曜~果南までのソロ曲ラッシュでは斉藤朱夏さんにドキドキしつつ、隣の彼が推しパートでウッキウキになっている新たな一面を見られたし――などなど。


詰まるところ。
自分は、「ステージ」側の臨場感は勿論、「客席」側……とりわけ「隣」のことも意識して、会場全部を我がこととしてライブを楽しんでいるんだな、と、改めてそう感じることができたのが、この3rdライブだったのである。


          *

で。
いつもとはまた違った感動と熱を胸に埼玉公演を後にし、連番の彼とは再会を誓って*12、3rdライブを終えた、

はずだったが。

約ひと月後、七夕の日。

たまたまプライべートで仙台まで出ていた折*13、ふとショッピングモールに併設された映画館を覗いたら――福岡公演1日目の席が僅かに空いていて。

          *

ソッコ取ったわー。

ラブライブレードもTシャツも全然用意してなかったけど躊躇いなく取ったわー。

          *

またあの輝きに触れたい。
たとえそれが、自分一人でも構わない、と。
あるいは。
自分が輝きに触れることで、その感動を誰かに話したり、いつか追いかけてハマってくれる誰かへ「すごかったんだよ!」と伝えたりできればと――そんな気持ちも少なからずあったのだ。

そして、福岡公演1日目。
ベースとなる曲目は埼玉と変わらなかったため、全体として「もう一度の熱気」を感じられたり、「MIRACLE WAVE」の「大成功」を見届けられてまた号泣してしまったり、他方では埼玉で聴けなかった2期円盤曲前半である千歌、花丸、善子、梨子のソロ曲を回収することもできた。
それだけで、この日は満足を覚えることができた。
のに。


Saint Aqours Snow――Awaken the Power披露後。
不意打ちでSaint Snowが「DROP OUT?!」を披露して長い長い咆哮を伸ばした。


終盤、WBNWから、ドラマパートを経ての青ジャン――決勝戦再現後。
不意打ちでAqoursが「キセキヒカル」を披露してクソデカ大声を轟かせた。


視聴動画時点から大好きだった、サントラのリードメロディーをアレンジした最後の円盤曲が「キセキヒカル」で。
それを優勝曲、物語の始まりの曲につなげてサプライズで出してくるセンスが物凄かったし。
またこれを一人で、LVで聴いた、というのも、自分的には衝撃的な体験だった。

最後、アンコール後に勇君とWSで〆られ、劇場を、そして仙台を後にしながら。

またひとつ、絶対に忘れられないライブに出逢えたと思ったし。
またひとつ、絶対に伝えなきゃならないライブを見届けたとも思ったし。
叶うなら次は、必ず誰かとこの曲を聴き届けたいと――そんなことを考えていた。


          *


夏には、恒例のアニサマを経た。
この年はようやくAqoursSSAに立つ瞬間を見られて感無量だったし、「君の瞳を巡る冒険」や「WONDERFUL STORIES」など意外な選曲に巡り合うこともできた。
更に、3日目。直接的でこそないが、THE MONSTERSが生バンドで「Snow halation」を突如演奏したのである。思い出深いSSAで白からオレンジに変わる瞬間を今生でもう一度見られた、というのは、それだけで万感の思いだった。

         *

秋には、NHK-FMで「今日は一日”ラブライブ!”三昧」というお祭り番組も放送された*14
これまでに無い試みで、かつ、現行のAqoursは勿論、μ'sのキャストも何人か出演するということで、当日はTwitterの実況が大いに盛り上がった。

新田恵海さんのMCで、「ぼららら」を皮切りに、様々なゲストが入れ替わりで曲やラブライブへの想いを語っていく。ときに懐かしい歌や話があり、ときに現在進行形の想いが更新され、ときに今まではあり得なかった新たな関係性が――μ'sとAqours、それぞれの絡みが生まれていく。
全74曲、約9時間、ひとつのライブにも匹敵するほどの興奮を自宅で味わうことができたし、バーチャルの上でとはいえ、本当に久々に、μ's時代に一緒だった人たちと同じ「ラブライブ!」のコンテンツを楽しめたのが、本当に嬉しかった。また自分自身の得たものとしても、色々な話からの新しい感動や、インスピレーションがあった。

そして私は、気が付けばまた、筆を執っていた。

ラブライブ!」の二次創作に関して言えば、実は2014年頃から休み休み続けていたのだが*15、結果的にこの時の衝動は、二次創作の作品群では最も長いお話となった(それでも原稿20枚程度だが)。

番組だけで完成されたものを、敢えて更に補完するには何が必要か。あるいは、よりラブライブ! らしくするにはどうすればいいか――。
そんなことを思いながら、完成させたのが、「番組に出演していない人たちにフォーカスを当て、番組を思い返す」という物語だった。

当時こそ、あまり意識はしていなかったが。

今思えば、やはり私は、「離れていても想いは繋がっている」だとか「誰と過ごしたうえで曲や物語が生まれたのか」だとか、そういう意識を、このシリーズとリンクさせているのかもしれない。


          *


誰かと、みんなと。
ずっと己の内に持ち続けていたその気持ちのひとつは、「三昧」の翌々月、思わぬ形で結実する。

ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 4th LoveLive! ~Sailing to the Sunshine~」。

Aqours初の――そして、シリーズでは2度目となる、東京ドーム公演だった。

この4thライブでは、念願叶って、両日現地参戦が決定。
連番相手は1st、2ndと共に来た友人と、加えて2日目は後輩と、アニサマで知り合った友人の友人(つまり友人)、それから職場の先輩2人とも会い、そこそこの「所帯」になったメンバーで臨んだライブとなった。

          *

初手、「浦の星交響楽団」で度肝を抜かれ。
馴染みの曲や、初めてのものもあった学年別曲、スクフェスコラボのクリスマスソング2曲を交えながらも、曲自体は、1期~2期の大筋をなぞるようなセットリストで。

ただ――その曲が、とてつもなく進化を果たしていた。


""失敗""を経て、8人から9人へと新たに""想い""を""ひとつ""にした「想いよひとつになれ」。

オリジナル衣装でより完成度を高めた「MY舞☆TONIGHT」。

リアル船《Aqour Ship》を召喚させて歌唱された「MIRAI TICKET」「WATER BLUE NEW WORLD」。

カメラワークから舞台演出、何より""11人""のキレが更に上がっていた「Awaken the Power」。


とりわけ、「アニメの再現」というフレームを超えたものを作った「想いよ」や「ミラチケ」「WBNW」は、1stから感じた「ライブで"完成"する」とか「ライブ・出演者あってこそ」というのが「ラブライブ!サンシャイン!!」なのだと、改めて思うことができた。

本当に、感慨深い気持ちでいっぱいだったのだ。
2年前、同じ会場で「ひとつの光」に客席で魅せられた彼女たちが、東京ドームに立てるまでの、自分たちだけの輝きを生みだせる存在になったんだな――と。

そして。

浦の星交響楽団とのアンサンブルで奏でられた「キセキヒカル」や、アンコール後の「Thank you, FRIENDS!!」は、まさに9人ではなく""18人""で、そして「みんなで叶える物語」を体現しているパフォーマンスだったようにすら思う。


3rdで一人で見たキセキヒカルを、ようやく、誰かと体験できた。
それも、Aqours9人だけじゃなく、他の演者と一緒に完成させた曲になった。

終演後、友と冗談交じりに「Thank you, FRIENDS」と握手を交わし合う――それほどまで大切な人を感じられる曲があった。
そんな曲は、最後に「キャラクター」と「キャスト」が""対""になって画面に映り、感謝を伝え合うようなポーズで〆られた。


誰かと一緒に楽しめて、思い出を作っていけるコンテンツがラブライブ! なんだ。
「みんなで叶える物語」がここにあるんだ――。

2日目の最後の最後。
こちらの声に応えて、再三飛び出してくれた輝きたちを目の当たりにしながら、考えていたのは、そんなことだった。

          *

なんならこの日そのまま山梨に出張に行ってたから特急の中でもずっと考えてた。

          *


程なくして。
ラブライブ! の、新しい作品が、世に出された。

一部は「スクフェス」から、そして全部は「PDP」として生まれ。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」として新たに「ラブライブ!」を背負って立つ少女たちの、1stアルバム――「TOKIMEKI Runners」だ。

          *

こっから更に虹ヶ咲編!?

          *

いやこっからすげえのはAqours編でありμ's編にもなりえるところなのだが。


「TOKIMEKI Runners」に関連して、まず発売前にアップロードされた、ソーシャルゲームラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」のMVにしこたま驚いたことを覚えている。
そのCG技術の進化もさることながら。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は勿論、Aqours、そしてμ'sが、一堂に会して、交流し、1つの曲――TOKIMEKI Runnersを披露していたのだから。

それだけでも、先述の1stアルバムのリードナンバーがとんでもないものになるという確信はあった。
だが実際にアルバムを紐解くと、ほかの9曲も「すべてソロ曲」という大前提の下、他グループではなかなか聴けなかった設定やチューンの曲が次々と出てきて、これだけ長く追い続けたコンテンツなのに最大級の「新鮮」を味わうことができてしまったのである。

作詞作曲、9人がソロであるコンセプト、特定のグループ名を付けないスタンスなど、すごく攻めているし――時期も相まって、賛否は両論、散見もされた。
だがそのチャレンジングな姿勢に、却って私は、これも追ってみたい、応援したい、見届けたい、という欲求に駆られて。
やがてその想いは、これまでの例に漏れず…………新たな「彼女たち」の人気上昇に伴って、どんどん増大していくことになる。


          *


増大はしていくが、それは別の何かが萎むわけでは、当然無く。

2018年、年末。
Aqoursが初の紅白歌合戦出場の快挙を遂げたとき――私は。
やっぱり私は、いつかのように、いつものように、全力で応援をした。

君のこころは輝いてるかい?

その問いかけに、YESと、変わらず力強く、応えるように。


          *


そして、年が明けてすぐ。
ラブライブ!サンシャイン!! のひとつの物語の区切りを、見届けた。

ラブライブ! サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」。

新天地で新たな関係と出会い、また卒業する者と留まる者のこれからを葛藤し、
その中で、幻の「決勝戦」を経て、新たな一歩を踏み出し。
いつかの夢を重ねながら、残る者がまた新たな輝きを生む物語だった。

見て――見届けたけれど。

観賞後の気持ちに、不思議と寂しさは無かったことを覚えている。
「ひと区切り」で、「集大成」ではあったけれど……それを見終えてなお、終わってくれるな、という思いは無く。

「笑顔でね また会おうと言ってみよう 心からね」

彼女たちが輝かせた最高級の音楽に、むしろ、これから先への希望を、強く感じたのだった。

          *

そして。
また会える、新しい夢が繋がると、そんな大言壮語とすら思える言葉が、2019年では現実になっていく。

          *

4月には、Aqoursのアジアツアー千葉公演へと参戦してきた。
4thでも一緒だった、後輩との連番だ。
このとき、小宮有紗さんが療養中のため欠席だったが、それを埋めるかのように、8人が1期曲中心のセットリストで次々とパフォーマンスを繰り出してきたのである。さらにMCはこれまででも一番といっていいほど少なく、最後の最後で挨拶、コーレスが行われる、というチャレンジングな構成でもあった。だが、

>他方で1stは劇〜歌まで演者、2-4thは歌のみ、だったのが、ここで劇=アニメ、歌=演者と流れていくことで2つがよりひとつに溶け合っていくような何かを視た、気がした

当時Twitterでこんな感想を残しているように、ここでもまた新しい見せ方、別解とも呼べる「完成」があって。
どんどん「見たことない」ものを見せてきてくれるAqoursに、私は歓びすら覚えていた。


また。
5月末にあったのが、9周年発表会での「ラブライブ!フェス」の発表を初めとするシリーズ9周年を記念した様々な試みの発表だ。
発表会はメディア向け、夕方だったので、会社で仕事をしながらこっそりと聴いて――

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オフィスで号泣していた。

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コンテンツにハマったのは高校生の頃だったのに、気が付けば社会人も三年目。特に前年はシリーズを過去最大級に楽しみつつも、仕事に忙殺されクサクサすることも少なからず、""なんだか遠くまで来ちゃった""と思うことすら多くなっていた。

それでも、彼女たちが遠くなるなんてことは無くて、また近くに感じることができる――そのことが、嬉しくて仕方が無かったのだ。


立て続け、10日後にはAqoursの5thライブへ参戦する。
ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 5th LoveLive! ~Next SPARKLING!!~」と、劇場版のファイナルテーマを冠した5thは、再びメットライフドームの地で開催されて。
μ'sにとってのSSAか、あるいは単純な回数としてはそれ以上来たことになる、ある種ホームのような安心できる場所で、また初日から隣にいたのも、1stからの旧友で――

          *

私たちは虹になった。

          *

比喩抜きで虹になったんだから本当にすごい。

本編は、劇場版の曲を中心とする構成だった。そのため約半年前に見た物語をもう一度堪能できたし、それだけでなく、前後に劇場版関連曲や意外な円盤曲、ナンバリングタイトルなども混じることで、9人の軌跡全体を「追体験」しているような感覚にもなれたのである。
個人的にはサプライズスリワンの爆発力、ライブを経てさらに一段階好きになれたMarine Border Parasol、HAJIMARI ROAD is coming!?!!?!?!??!!?!?!!?!、そしてBrightest MelodyからOver The Next Rainbowのノンストップ激エモコンボなどが、特に印象深い。

そしてアンコール――示し合わせたわけでもないのに会場全体が「虹」を作った時。
ここでも「みんな」を感じられるのかと目頭が熱くなったし、「Next SPARKLING!!」であたらしい輝きへ向かった彼女たちとともに皆で「Aqours――サンシャイン――!!」のコールを叫んだときは、まだまだこうして彼女たちを呼び続けてやるという気持ちで、胸がいっぱいだった。

          *

5thライブ、2日目はLVで前日からの友人と、そのさらに友人(初対面)と連番をし、新たな絆が生まれたりして。
また前日に引き続く輝きや、虹に瞳を潤ませ。さらにラストMCで伊波杏樹さんが叫んだ「私の始まりは、ラブライブだった」という言葉に、胸を刺されたような衝撃を受けたりしながら――。
私もまた、あたらしい輝きへと手を伸ばし続けていく。

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あるときは、6月23日のランティス祭りでCYaRon!、AZALEA、Guilty Kissと、ユニット登場でも充分な存在感を残せる3人組たちの雄姿を目の当たりにして。また同日には、初めて虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会9人のパフォーマンスを見届け、いつかのμ'sや、いつかのAqoursにも感じたら""ワクワク""を、彼女たちにも確かに感じることができた。
絶対に次はワンマンに行って、ラブライブ!フェスでもその成長と活躍を見るんだ――そんな期待が、新たにこの時生まれたのであった*16


あるときは、8月のアニサマで彼女たちのパフォーマンスを見た。
2日目、Aqoursラブライブ! では初のトリを務める。大きな存在であることを遺憾なくアピールしつつも、「僕道」で最新の自分たちを見せる一方で「青ジャン」という初心を忘れなかったり――「想いよひとつになれ」9人ver.で、ライブの中で成長していった彼女たちの在り方を会場全員の心に刻みつけるように披露したりしたのが、本当にアツくて。
また3日目は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が「TOKIMEKI Runners」を序盤で見せてくれた。先輩がワンマンを行い、合同フェスでトリを務めた会場でも、末っ子ながら全力でパフォーマンスし、全力で楽しもうとしていた彼女たちの姿が、今でも強く目に焼き付いている*17


あるときは、オタク生では3度目となる東京ドームで、輝きを見た。
10月、バンナムフェス。両日参戦したその二日目、Guilty Kissの猛撃を垣間見たのだ。
アイドルマスターシリーズをはじめとする多数のビッグタイトルが並ぶ中、アウェーとも呼べる中だった。他の作品もほとんど知っており、また好きなものも多い中ではあったが、やはり個人的にラブライブ!への思い入れは深く、それでも「こんな中のパフォーマンスなんて大丈夫だろうか」という心配も少なからずあったのだが――圧巻だった。
新曲の「New Romantics Sailers」を含む、タイトル全6曲を怒涛の勢いで一斉に披露したのだ。プロデューサーも何もかもを文字通り巻き込んでGuilty Kissコールの雨を降らせ、ドーム全体を""堕天""させた3人を見ていた時は、なぜだか「誇らしい」とも呼べるような感慨に満ちていたことを覚えている。

          *

ライブ以外でも、様々なところで光が生まれた。

この年の7月から、シリーズの垣根を超えてキャストが一堂に会する夢のような番組「ラブライブ!シリーズのオールナイトニッポンGOLD」が月一回放送で始まった。
キャストたちのここでしか聴けない絡みやネタに、大いに湧き上がりつつ、金曜の夜放送ということもあって、社会生活で溜まった心身の疲れを吹き飛ばしてくれるリフレッシュツールのような存在になった。秋頃には労働も修羅場が続き、日を跨ぐ残業が目に見えて多くなった時期もあったが、そんなときも会社でこの番組を聴きながら、トークに笑い、音楽に励まされ、「もう少しだけ頑張ろう」とエネルギーを貰ったりもしていたのであった。

ラジオ番組でいえば、10月には前年にも放送された特番「今日は一日”ラブライブ!”三昧」の「2」がオンエアーされた。MCがAqours高槻かなこさんだったり、「ニジガク」のメンバーから2人がやってきたりと賑やかさが増しつつ、更に多くの曲目、更に多くの思い出が付随し、1年前に続いて大いに元気とインスピレーションをここでも受け取って、それがいまにも活きていたりする。
具体的には、いま書いている二次創作が、この番組をベースにしていて。
時間が経っても「何かを書きたい」という衝動が収まらないほど、素晴らしい番組だったのである。

更に時系列は前後するが、9月には「スクスタ」が満を持してリリース開始となり、すぐに、新たなコンテンツの楽しみ方の1つとなった。
3グループ27人が描かれたカードはとにかく可愛いし、ニジガクを中心とするストーリーパートは、これまでぼんやりとしか知れていなかった彼女たちの内面に、大きく迫ることのできる貴重なコンテンツとして楽しめた。物語を知れば知るほど、ニジガクの9人のことはどんどん好きになっていくし、加えて物語上でキーマンとなるμ'sやAqoursに対しても、好きの気持ちが増えていった。等身大の「ニジガク」と、どこか「大きな存在」として描かれつつも彼女たちの物語の流れを確かに残したままの「μ's」や「Aqours」――その存在証明と立ち位置が、たまらなく愛おしくて、ストーリーのひとつひとつもまた、どんどん好きになることができた。

          *

まあまだ7章なんだけどさ!!!!!(やります)

          *


そうして個々がレベルアップを遂げていったり、ある種学際的なクロスオーバーが次々と果たされたりしていく中。
2019年12月14日。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の1stワンマンライブである「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 First Live “with You”」を、武蔵の森総合スポーツプラザで見届けてきた。

このとき一緒に行動したのは、3人。
Aqours 4th、アジアツアーで輝きのキセキをともに追ってきた後輩と、
μ's 3rdで生まれて初めてともにラブライブへ触れた、同級生2人だった。

これまでの関係性がまたひとつに収束して、大好きな作品を一緒に応援できる。
端的に言って、それだけで既に最高のライブだった*18

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これは夢かな 夢って素敵な言葉

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初のニジガクワンマンライブ、というのも、自分としては妙な心地だった。

初めてμ'sを見た時ほど、それを体感することへの緊張はないし。
初めてAqoursを見た時ほど、そこへ飛び込むことへの不安はない。

この子たちも「ラブライブ!」で、だけども「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」なんだ――――そう、初めからちゃんとわかっていたし、実際ライブを見たら本当にその通りで、心から安心もしていた。

全体曲では「光に憧れた少女たちの一歩目」や「友との関係性への尊敬」といった「ラブライブ!」らしい雰囲気を享受することができたし、またソロ曲では、各キャラクターの――ともすれば先輩たちよりも濃い――個性をフルに活かしたパフォーマンスや音楽を目一杯受け止めることもできた。

最終的に、前年にリリースされた「TOKIMEKI Runners」と、この1か月ほど前に発売された最新アルバム「Love U my frirends」の、すべての収録曲が披露され。
約2時間半のライブで、私は、春に期待していた彼女たちの成長と活躍を、確かに知ることができたし。
他方では、ライブ後にあーだこーだと感想を交わし合うことが、このニジガクでもできることに、この上ない幸せをも感じていたのだった。


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――結局。

ラブライブを知って、ハマって、留まることなく""好き""を増やしていって。

それでも私の芯は、7年前から、何も変わってはいないようだ。

「可能性を感じた」あの日から私は、
いつだって、人生をラブライブに支えられてきた。
いつだって、彼女たちの成長を応援し続けてきた。
いつだって、誰かと楽しめることで幸せを得てきた。

だから、これからも。
楽しくてもつらくても、その記憶のどこかに、ラブライブがあれば良いと願う。
いまの彼女たちや、場合によっては新しく光に憧れた誰かの、物語と、成長を応援していきたいと願う。
そんな行為が、独りだけではなく、誰かと――良ければこれまでどおりの皆と続けられることを、願う。


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そうして。
9周年のステージを見上げる前の呟き言もまた、途切れることなく続いていく。


2020年1月18日、19日。
ラブライブ!フェス」。
そこに立ち会った私が、
今回は彼女たちからどんな感情を受け取ったのか。
どんな成長を目の当たりにし、再会を果たし、これからへの展望を想ったのか。
誰と見届けて、どんな熱を語り合ったのか。


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それもまた、必ずどこかで、私は呟くだろう。
祭の後にも、語りたい感情は生まれ続けていくのだから。
祭の前にここまで重ねた、数多の思い出たちのように。

*1:なんなら二次試験までの期間でもプッシュされたりTwitterで実況されたりした。

*2:にも拘わらずこのとき、東京駅丸の内口まで赴いてSnow halation聖地巡礼をしていた。豪胆か。

*3:原因や責任はどうであれ。

*4:夕方寝て夜中起きて、2時―4時で散歩をしたり、神社に足繁く通ったりしていた。当然学校などは行っていなく、唯一していた人間らしいことと言えば、小説執筆くらいだろうか

*5:こうして書き返すと、何故だろう。秋ばかりやたら個人的な思い出とコンテンツの繋がりが強い時期になっている。他の季節だって、少なからず色々あるはずなのだが。

*6:実際、今でもAqoursのすべての曲でも飛びぬけて好きだ。

*7:いやまあ、とはいえCDは全部買ったりニコ生などの関連動画もチラ見したり、落ち着くどころか引き続き追いかけるつもりは大いにあったのだが。

*8:土日は普通に行った。以来また皆勤賞なので、この2017年度1日目が、2013年からの参戦以来唯一の欠席日となっている。クソッ!

*9:中学時代、文化祭で発表するため、一時期バク転バク宙の練習に明け暮れていたことがあったため。

*10:本来は2ndでも一緒だった友人が来る予定だったが、何かで来られなかった。詳しく覚えてないけど、多分体調不良の有休消化とシフト組みの妙で来ようにも来られなかったんだろうな……。

*11:沼津を一緒に回った友人。こちらも中学からの知己だ。

*12:その通り、彼とはここでの縁を契機に、以後の関連ライブではほぼ必ず会って言葉を交わし合うほど仲が良くなった。「ラブライブ!」で(再び)広がる知り合いの輪、良い……。

*13:記録を顧みていたら、この日仙台で2期円盤を全て揃えていた。ばりエモか。

*14:2018年9月17日(月祝)。

*15:肝心の、初めて衝動的に書き始めた「LOVELESS WORLD」軸の二次創作は未完のままだが。いつか完成させることはあるのだろうか。

*16:あとかすみィ!!!!!!!!!!!!!!!! って反射的に叫ぶ悪癖も新たにこの時生まれたのであった。

*17:あとまたかすみィ!!!!!!!!!! って叫んだりして喉にも暫く焼き付いた。

*18:ライブ会場まで自転車漕ぐとかいう謎の思い出も出来たしなァ!